最高裁判所第三小法廷 昭和61年(行ツ)154号 判決 1987年4月07日
京都市上京区下立売通黒門西入橋西二町目六三三番地
上告人
林孝一
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都市上京区一条通西洞院東入元信如堂町三五八
被上告人
上京税務署長
横田光夫
右当事者間の大阪高等裁判所昭和六〇年(行コ)第四五号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六一年七月三一日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高田良爾の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。また、本件記録によれば、原審の審理上の措置に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 長島敦 裁判官 坂上壽夫)
(昭和六一年(行ツ)第一五四号 上告人 林孝一)
上告代理人高田良爾の上告理由
第一 上告理由第一点について
原判決には明らかな審理不尽がある。上告人は原審において被上告人が主張する同業者が上告人とその業態において類似性がないことを立証するために、同業者四名の証人申請を行なつたが、原審は、上告人の申請した証人をいずれも採用することなく、同業者四名は上告人と類似性があると判示しているが、かかる判示は審理不尽に基づくものである。
第二 上告理由第二点について
一、原判決は、前述の如く上告人が原審において「塗料」に関する上告人主張の同業者について証人申請を行い、その同業者の業態を明らかにし、上告人とその点において類似性がないことの反証を行おうとしたが、証人申請を却下したまま、同業者四件は上告人と類似性があると判示した。原判決は同業者四件が上告人と類似性がある理由として次のとおり判示している。
(一) 「控訴人が取り扱つている塗料も、引箔用の特殊なものではなく一般に使用されている塗料も引箔用の特殊なものではなく一般に使用されている皮革用ラッカー等であるので……控訴人と類似性がないとすることはできない」
(二) 「……店頭売りの有無を理由にこれらの同業者が控訴人と類似性がないとすることはできない」
(三) 「控訴人が仕入先であると主張する同業者Bも……控訴人の仕入先であるとの一事をもつて控訴人と類似性がないとするわけにはいかない」
二、
(一) 上告人は皮革用ラッカー等を引箔用としてのみ販売している。上告人は言うまでもなく家庭用、建築用及び工業用の塗料は一切取り扱つていない。上告人の取り扱い商品はその販売目的の点において同業者四件とは全く異なつており、類似同業者であると判断することはとうていできない。
(二) 上告人は店舗なく、もちろん店頭売りも全くない。しかるに同業者四件はそれなりに店舗らしい店舗をかまえ、それなりの立地条件をいかし店頭売りによつて利益をえている。
店頭売りの全くない上告人と店頭売りのある同業者四件とは営業形態の点において全く類似性がない。
(三) 上告人の仕入れ先である同業者Bと上告人はその取引形態において全く類似性がないことは誰の目にも明らかである。仕入先である同業者Bの原価率と上告人のそれと比較すれば同業者Bの原価率の方が低く利益がよいことは明らかである。
三、箔に関する同業者
同業者は箔及びその材料を販売している。上告人は箔のみならず引箔用の紙も取り扱つている。箔と引箔とはその用途の点において全く異なるものであり箔と引箔とは取り扱い商品としては全く類似性がない。箔は漆器、友禅、仏具、建築、絵画、その他美術工芸品に使用され、引箔は西陣織の帯に使用される。
従つて、上告人と同業者とは類似性がない。
以上